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December 2009

山のネットワーク第1回 【五ヶ瀬自然学校代表 杉田英治さん】

山のネットワーク第1回
NPO法人 五ヶ瀬自然学校代表 杉田英治さん


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 今回、ご紹介するのは、『NPO法人 五ヶ瀬自然学校』代表の杉田英治さん(42歳)です。
 先日、五ヶ瀬町の五ヶ瀬の里キャンプ村で催された、『第一回 山人の会(やまびとのかい)』の呼びかけ人の一人でもあります。山人の会とは、宮崎県と熊本県の、山で暮らす人、山で生きる人、山を愛する人、よそから山に移住して頑張っている人、やっぱり山が好きで帰ってきた人など、杉田さんやもう一人の呼びかけ人、西米良村の山師・田仲一成さんを中心に、個人の輪の集まりで催されたものです。
 杉田さん 「きっかけは、僕と田仲君が同じ移住組で頑張っていて、他にも若手の林業家や、大工、山に関わる仕事をしている友人知人に頑張っている人が多いので、そういう人たちを繋いだら、仕事が生まれ、何か面白いことができるのではないかと思いました」

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写真左が西米良村の山師・田仲一成さん

 杉田さんは、カヌーのプロでもあります。カナダのユーコン川(全長約3,000㎞)下りの大冒険や、五ヶ瀬町に移住してくる前は、北海道の弟子屈町(てしかが町)で、カヌーガイドの仕事をしていました。現在も、自身が運営するカヌー体験「自然屋川人」で、カヌーガイドをしています。川で遊び、川から山を見て、川から海をみてきました。
 杉田さん 「北海道の川と九州の川は、全然違います。例えば、僕がカヌーガイドをしていた釧路川は、全長100㎞ほどで、源流から海までの高低差が800mです。五ヶ瀬川は、距離がほぼ同じで高低差が1,600mもあります。倍ですね。北海道の川は、十年経っても変わりませんが、九州は二、三年で変わってしまう。一つの台風で、流れが変わってしまいます」

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 そんな川との繋がりが深い杉田さんは、川に魚が少なくなってしまった、水量が減ってしまったと感じています。これは、昔から五ヶ瀬町で暮らしてきた大工さんも言っていたことですが、昔は水量もあり、大雨が降ると、一週間ぐらいは川から水がひかなかったそうです。現在は、二、三日で水がひいてしまいます。
 杉田さんは、この原因が、山の荒廃と密接に関係していると考えています。どの地域でも、川の豊かさを知っているのは、だいたい50歳代から上の世代。水量や魚の数が減少するのが、時期的に、昭和35年からの植林事業と重なっているのだそうです。

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 杉田さん 「植林するときは、国や県が補助金をだしましたが、その後は、サポートできていません。外国産材を輸入し、国内の林業の低迷を招き、結果として森林の60%以上を占める人工林に手をつけられないという状況になりました。放棄された人工林がある山は地盤が弱く、大雨や台風が来るたびに、土砂崩れをおこし、大規模な洪水をひきおこします。そのたびに、川がにごります。清流に住むヤマメなどは、えらににごりが入ると死んでしまいます。ヤマメはそういう時には、にごりのない深い淵に非難するのですが、今ではそういう淵がなくなっています。大石が川底を転がることで、深い淵ができていくのですが、現在、そういう大石は、砂防ダムで塞き止められています。だから、いくら魚を放流しても無駄になってしまいます。一般的な河川改修では、根本的な解決になりません。森の再生こそが大切だと思います」
 山の保水力が戻れば、台風や大雨での川の増水が軽減され、洪水が減少します。林業が成り立つ仕組みも必要ですが、同時に手を出せないところは、自然の山に戻していくことで、昔のようにタプタプと水を湛えた豊かな川になる。それが、杉田さんの願いです。

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子ども時代のすごし方は重要。自然の中で感じたイマジネーションが、将来役立つ。
15年後ぐらいには、地域の中心が、今、学んでいる子どもたちになる。それが、楽しみ。 

 現在、杉田さんは、『NPO法人 五ヶ瀬自然学校』の環境体験学習を通して、そういった自然の大切さを、子どもたちや、多くの人たちに伝えています。また、放課後子ども教室や、地域内の特産品開発を通して、地域内でのコミュニケーションの充実、地域力の増幅に貢献しています。そして、自身が移住者である経験を活かし、農村活性化事業の一環として、空家情報を発信し、移住者への支援にも取り組んでいます。

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特産品開発にも取り組む。写真左はお肌に良い『山茶のお風呂』右はお米『四億年の大地』 
 
 杉田さんが五ヶ瀬町を移住先に選んだのは、自給自足が可能なエリアだからです。水は美しくて水道代は無料。夏は涼しくて快適で、作物もよくとれます。冬は、雪は降るけれども困るほどではありません。山には薪の材料がたくさんあります。「天国のようなところだよね」。薪ストーブの前で暖をとる杉田さんの周りには、今日も人が集います。「次は、水力発電に取り組みたい」。自然から得たイマジネーションが、どんどん形になっていきます。
【五ヶ瀬の里キャンプ村管理棟にて】

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NPO法人 五ヶ瀬自然学校が運営する五ヶ瀬の里キャンプ村。可愛い三坪のログハウス


NPO法人 五ヶ瀬自然学校
代表 杉田 英治
住所 882-1201 宮崎県西臼杵郡五ヶ瀬町鞍岡6452
電話 0982-73-6366
FAX 0982-73-6366
URL http://www.gokase.org

杉田英治さん プロフィール
1967年春/栃木県西那須野町に生まれる。
1993年~/デザイナーをしながら夏のみ釧路川のガイド会社ノースイーストカヌーセンターでカヌーガイドを始める。
1998年/東京中野区でデザイン会社スタジオクリーク発足。
2000年/北海道弟子屈町に移転。
2001年/宮崎県五ヶ瀬町に移転。
2002年7月/「自然屋川人」(しぜんやかわじん)蘇陽峡、五ヶ瀬川、小川などでカヌーツアーを実施。
2005年3月/特定非営利活動法人五ヶ瀬自然学校設立。初代理事長に就任。
現在/自然体験などの環境学習の他にも、放課後子ども教室、農村活性化事業、特産品の開発など、地域力を高めるネットワークづくりを手がけている。宮崎県地域づくりネットワーク協議会・西臼杵ブロック代表、宮崎県社会教育委員。

(レポート 藤木哲朗)
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