- 2010-06-28 (Mon) 17:26
- 山のネットワーク
山のネットワーク 第2回 【カフェ『Tali Kasin』(タリカシ)・堤台策さん、咲子さん】
今回ご紹介するのは、美郷町北郷区黒木地区の古民家で、Cafe&goods『Tali Kasin』(タリカシ)を営む、堤台策さんご一家です。
堤さん家族は、台策さん(39歳)、咲子さん(39歳)、耀平君(13歳)の三人暮らし。熊本市出身で、サーフィンが趣味。毎週末、日向市の海に通っていたのをきっかけに、美郷町北郷区に移住しました。
お店は、延岡市北方町と北郷区を結ぶ、宮崎県道20号北方北郷線沿いにあります。北方町川水流の五ヶ瀬川にかかる橋を渡って10分ほど車を走らせたら、右手に看板やのぼり旗があります。インディアンのテント(ティピー)が目印になると思います。
【Tali Kashin(タリカシ)】
2009年6月にオープンした、カフェ『Tali Kasin(タリカシ)』。インドネシア語で「慈愛の絆」という意味です。この名前は、2007年8月11日に、日向市伊勢ヶ浜で沖に流された中学生を助けようとして命を落とした、日向市漁業協同組合の研修生として学んでいたインドネシア人のエンダン・アリピンさん(当時21歳)の友人が、名づけました。
当日、堤夫妻もサーフィンをしていて、その場に居合わせた縁もあり、アリピンさんの友人と友達になりました。インディアンのテント、ティピーを建てるのも手伝ってくれたり、今でも交流があるそうです。
インディアンのテント、ティピー。
ティピーの前に鎮座するのは、空の神様、ガルーダ。インドネシアの国章にもなっています。
タリカシは、築八十年の古民家を改装しているので、とても趣があります。ご家族で、熊本から週末を中心に通っては、手入れをしてきました。
今回ご紹介するのは、美郷町北郷区黒木地区の古民家で、Cafe&goods『Tali Kasin』(タリカシ)を営む、堤台策さんご一家です。
堤さん家族は、台策さん(39歳)、咲子さん(39歳)、耀平君(13歳)の三人暮らし。熊本市出身で、サーフィンが趣味。毎週末、日向市の海に通っていたのをきっかけに、美郷町北郷区に移住しました。
お店は、延岡市北方町と北郷区を結ぶ、宮崎県道20号北方北郷線沿いにあります。北方町川水流の五ヶ瀬川にかかる橋を渡って10分ほど車を走らせたら、右手に看板やのぼり旗があります。インディアンのテント(ティピー)が目印になると思います。
【Tali Kashin(タリカシ)】
2009年6月にオープンした、カフェ『Tali Kasin(タリカシ)』。インドネシア語で「慈愛の絆」という意味です。この名前は、2007年8月11日に、日向市伊勢ヶ浜で沖に流された中学生を助けようとして命を落とした、日向市漁業協同組合の研修生として学んでいたインドネシア人のエンダン・アリピンさん(当時21歳)の友人が、名づけました。
当日、堤夫妻もサーフィンをしていて、その場に居合わせた縁もあり、アリピンさんの友人と友達になりました。インディアンのテント、ティピーを建てるのも手伝ってくれたり、今でも交流があるそうです。
インディアンのテント、ティピー。
ティピーの前に鎮座するのは、空の神様、ガルーダ。インドネシアの国章にもなっています。
タリカシは、築八十年の古民家を改装しているので、とても趣があります。ご家族で、熊本から週末を中心に通っては、手入れをしてきました。
店内には、井戸もあります。
台策さん制作のサン・キャッチャー。光を集め、店内に取り込みます。
昔は、椎茸乾燥の作業場として使われていたそうです。天井も高く、とても落ち着いた空間が広がっています。
台策さんが、廃材を利用して作ったテーブルとイス。
台策さんは、一級造園施工管理技師の資格を持ち、県の環境アドバイザーにも任命されています。商業店舗の緑化から内装まで、幅広くこなします。今回は仕事ではないので、じっくり楽しみながら造りあげているそうです。
多国籍雑貨と、手作り雑貨もあります。
アジアンテイストの面白いものが、さりげなく置いてあります。
棚には、ハーブがいっぱい並んでいます。
ハーブは、飲用のほかに、無添加のスキンケアクリームの原料として使います。
台策さん、手製の石釜。阿蘇の溶岩石を使用しています。ピザは、台策さんが担当。
にがこ竹のピザに、マロー(タチアオイ)の花を添えて。外側はパリッと、内側はしっとり、具沢山ですが何枚も食べたくなります。
台策さん
石釜には、阿蘇の溶岩が組んであります。今は、採掘禁止ですが、熊本で造園の仕事をしていたときに使っていたものを自分で組んでつくりました。溶岩は、普通の石と比べて遠赤外線効果が高く、例えばパンの膨れ方が違います。クッキーでもその違いが分かるほどです。
ピザは、高温で焼き上げます。温度調節は、焚口の空気量で調節します。生地は、インドのチャパティの原料のアタコをインドから輸入し、それにいくつかのスパイスを練りこみます。季節の野菜やハーブ、チーズも無添加のものを使います。チーズが苦手だったのに、美味しいと食べられた方もいらっしゃいました。
ピザは、屋外の石釜か、石釜オーブンで作ります。お勧めは、屋外の石釜ですので、ご要望の方は予め電話予約をしていただけると対応させていただきます。
咲子さん
タリカシの料理に特にこだわりはありませんが、北郷の野菜やハーブ、山にあるものを使って、自分が美味しいと思えるものを、丁寧に作ろうと心がけています。せっかくここまで来てくださるのだから、ここでしか食べられないものを提供したいですね。
日替わりのランチは、本当に日替わりで、ピザやパスタ、熊本県の郷土料理まで。予約制で精進料理などもあります。
背の高いウッドデッキも、台策さんがつくりました。
【台策さん、咲子さんにインタビュー】
どういった理由で、美郷町北郷区へ移住し、店舗を開くことになったのですか?
台策さん
サーフィンが趣味で毎週末、熊本市から、日向の海に通っていました。いっそのこと、宮崎で暮らしたいと思っていたのですが、暮らすなら山の近くがいいねと、家族で話していました。そんなときに、海への道すがら、この古民家をみつけ、こんな家で暮らしたいと思いました。店舗としても最適です。周りを雑木林に囲まれていて、目の前が川。とても良い環境です。近所の人に話をきくと、空き家になっているとのこと。さっそく、お願いをして契約することにしました。
八年間空き家だったそうですが、大家さんが「あんた達だったら、貸しても良いよ」と、承諾して下さいました。しかも、山も自由に使ってよいとのこと。近所の人が言うには、借りたい人はたくさんいたけれど、大家さんが、八年間、誰にも貸さなかったそうです。
「あんた達のために、貸さんかったっちゃが」と、近所の人も歓迎して下さいましたし、ここはなぜか年配の移住者が多いので、「姥捨て山に、若い人が来た」と、冗談で迎えて下さいました。
家屋も、大家さんが、まめに手入れをしていたらしく、とてもよい状態です。2,008年11月に、契約をし、週末を中心に熊本から通いながら、住居兼店舗づくりをしました。
田舎で暮らすということは、何でも出来るようになるということ。
古民家ということですが、自分たちで手入れをして、気づいたことはありますか?
咲子さん
最初にびっくりしたのが、ものすごい数の湯のみやお猪口、茶碗があったこと。そして、タライや金網のザル、使い方が分からないような道具が色々と出てきました。
台策さん
築八十年ぐらいだと思うのですが、造りがよく考えてあるなと、驚かされます。例えば、屋根と天井の間が広くとってあり、小さな窓もあるから、断熱と空調の働きをします。屋外が灼熱でも、屋内はクーラーがなくても、涼しいです。現代の家は、狭くて暑いですよね。
それに、昔は、囲炉裏や火鉢、炭で暖をとっていたため、梁も燻され強くなっているのだと思います。
暮らしの道具。
実際に暮らしてみて、気づいたことはありますか?
台策さん
お風呂も薪、ご飯を炊くのも薪、暖をとるのも薪。最初は不便に感じていたけれども、これが当たり前の暮らしなのだと実感するようになりました。ここら辺のおばちゃんは、「私の畑は山全部」と、言います。季節の山菜が、たくさん採れるからです。井戸水もきれいだし、ハーブもよく育ちます。熊本での暮らしは、便利で簡単だったけど、そのときに比べて暮らしのランニングコストは、ずいぶん減りました。
そして、便利で簡単なものには、副作用があるように思います。例えば、冬は火鉢で過ごしたのですが、炭は、体を芯から温めてくれます。五右衛門風呂もそうです。でも、石油ストーブだと、全く温まらない。その上、石油代が必要です。昔の暮らしは、本当に理に適っています。
咲子さん
近くに商店もないから、買い物に行かなくなり、何でも自分で作るようになりました。味噌、醤油、みりん、マヨネーズなどの調味料の作り方も覚えましたし、パンなども自分で焼きます。薬も草木を利用できますし、使い方の分からなかった道具も、自分で試しながら使っていると、案外、それが正しい使い方だったりします。ここの暮らしにあった道具を、ここにあるもので作って使う。まさか自分で出来るとは思ってもみなかったのですが、必要に迫られると、結構出来るものです。どんどん興味の範囲が広がっていきます。暮らしの自給率も上がり、楽しく暮らせています。
ただ、その分作業が大変です。不便なのはお風呂ですね。髪の毛だけを洗おうと思っても、ガスは厨房にしかないので、簡単にシャワーが使えるということもありません。家族全員、作業の負担が増えたので、自分の片付けが疎かになって、その分も面倒を見ていると、やりたいことはたくさんあっても時間が足りません。
夏は草むしりが大変です。ただ、草むしりをしながら、山野草が見られるのは良いですね。そうやって、色んなものを意識するようになりました。
台策さん
今まで聞きとれなかった虫の声や、鳥の声。ちょっとした鳴き声の変化も分かるようになりましたし、風の香りも感じるようになりました。
息子もとても楽しんでいます。熊本にいたときは、クラスの中では体力があるほうだったのですが、山や川でずっと遊んできたこっちの子供たちには、まだ敵わないようです。それでも、自転車を乗り回し、体力もずいぶんついてきましたし、性格もとても積極的になってきたと思います。
ご近所付き合いはどうですか?大変なことはありますか?
咲子さん
こっちのお年寄りは、若者を惹きつける明るさと魅力を持っています。植物に詳しいおばちゃんや、堆肥作りに熱心なおじいさん、三味線が上手なおじいさん。みんなすごい技術を持っています。色んなことを教えていただいて、とても助けられています。
大変なことは、飲み会が休日にあること。休日はお店のほうが忙しくて、なかなか参加できません。断ると、ものすごく悲しそうな顔をされるので、私も悲しくなってしまうんです。
台策さん
面白い人が多いですし、とても親切です。あと、酒のみが多いです。みんなで助け合って生きていて、特にこの地区は団結力がものすごいです。のんびり度合いも半端じゃないので、逆に可能性を感じます。そのエネルギーを幾分かでも仕事にまわせば、色んなことが考えられるんじゃないかと思います。
お店に遊びに来る若い子たちも、自分の考えや、夢を語っていきます。この地域には、助け合いの気持ちがあるので、お金をかけなくても、仕事をつくることがいくらでも出来ると思います。
今、息子の同級生のお父さんや地域の人たちと、NPOを立ち上げ、地域づくりを考えています。自分たちの子供に、ここで暮らす環境、仕事を残してやりたいという単純な理由からです。自然や文化が豊かなので、きっと、面白いものが出来ると思います。民泊も始める予定です。
咲子さん手製のヨモギ入りの石鹸。ヨモギを摘み、一年間植物油に漬け込んで、エキスを抽出します。良いものを作るには、手間隙がかかります。
当面の課題や、今後の目標はありますか?
台策さん
課題としては、この地域の中でやるべきことを、時間をかけてしっかりとやっていくということ。自分のやりたいこと、理想にどれだけ近づけられるかということですね。お店では、音楽イベントを中心に色々と企画していきます。
単体で盛り上がっても一瞬のことなので、しっかりとした考えを持って行動できる個人、グループと繋がって、継続的にやっていくことが大事だと思います。
咲子さん
美郷町は、自然が豊かで本当に良いところだから、うちを通してでもいいし、そうでなくてもいいので、もっとみなさんにそのことを知ってもらいたいです。
まだ、お店自体が完結していなくて、手を入れなければならない部分もあるし、お客さんに迷惑をかけている部分もあると思うので、まずは基礎をしっかりと固めること。経営が軌道に乗ったら、休みを増やしてでも、石鹸づくりや物作りの時間を増やしたいです。
これから来るお客さんに、メッセージをお願いします。
台策さん
時間がないときは、来ないほうがいいですよ。ゆっくり出来るときに、お越しください。山も案内できますし、色々とお話しましょう。
咲子さん
自然を楽しみたい方は、めかしこんで来ないようにお願いします。普段着でお越しください。山で遊んだり、薪割りなどは、いつでも出来ますよ♪
ハヌマン。森の守り神。犬だけどサルの名前だそうです。昼寝中です。
Cafe&goods『Tali Kasin』(タリカシ)
宮崎県東臼杵郡北郷区黒木1676-8
電話 0982-62-6382
営業時間 11:30~19:00
定休日 月曜日
【Amago-no-haru】(タリカシブログ)
http://talikasih.exblog.jp/
(レポート 藤木哲朗)
- Newer: 山のネットワーク第3回 【上鹿川の西京子さん】
- Older: 山のネットワーク第1回 【五ヶ瀬自然学校代表 杉田英治さん】
このアイテムは閲覧専用です。コメントの投稿、投票はできません。