- 2010-03-01 (Mon) 03:19
- 山の活動
山の活動 第1回【薪ストーブでエコビレッジ】
薪ストーブは暖かい。ゆらゆらと揺れる炎を眺めるのも楽しい。
今回、ご紹介するのは、薪ストーブによる五ヶ瀬町エコビレッジ構想を掲げる、五ヶ瀬町の市民グループの取り組みです。
この市民グループは、『Backstay』(五ヶ瀬町を中心に活躍するボーカルグループ。リーダー・那須政彦)、『NPO法人 五ヶ瀬自然学校』(五ヶ瀬町の自然を活かした学びの自然塾。代表・杉田英治)、『五ヶ瀬町林業研究グループ連絡協議会』(五ヶ瀬町の林業家で組織された林業研究グループ。代表・篠村真二)で結成されています。
昨年四月に、桜花亭(宮野原地区)で、薪ストーブ体験会を開催したのを皮切りに、五ヶ瀬町内での薪ストーブの普及、啓発運動に取り組み、今年の一月からは、本格的に薪の生産と販売に着手しています。
『薪ストーブでエコビレッジ』事業 吉村優さん(26歳)
五ヶ瀬町内に薪ストーブを普及させ、山地残材(伐採作業中に出る端材、用途のない間伐材)を薪として活用することにより、山の環境美化、家庭にも環境にもやさしい町づくりを目的としています。また、薪ストーブ利用者の光熱費の削減、林業家による薪づくりという新しい労働の場や、二酸化炭素削減に関する様々な事業の可能性を模索しています。
現在、山の持ち主の高齢化、林業労働者の不足、コストを理由に、手入れの行き届かない山が増えています。山が荒れれば、災害も増えます。逆に、山に人が入れば、鹿や猪の獣害が減ります。
昨年は、農林水産省や環境省の事業や補助金を活用して、五ヶ瀬町の個人宅やNPO団体に六台の薪ストーブが入りました。薪は、薪ストーブの他に、風呂の焚物としても利用されています。高齢化が進み、体力的に薪割ができなくなった年配の方に、大変喜ばれています。薪作りは、西臼杵森林組合五ヶ瀬支所で、雨の日に林業者がします。活動を知った林業者の参加希望者が増え始めています。
薪を売って利益を上げるのが目的ではなく、事業を通して、次世代の子どもたちによりよい環境を残していこうというのが僕たちの活動の根幹にあります。
Backstay メンバーの落合さん宅での練習風景。週に一度は必ず集まる。本番が近づくと連日練習となる。左から 松本陽介さん(32歳) 落合竜麻さん(28歳) 那須政彦さん(34歳) 長田慎司さん(28歳) 他に、岩本撤也さん(28歳) マネージャー・後藤恵さん(28歳) 事務局・吉村優さん(26歳)
『Backstay』リーダー・那須政彦さん(34歳)
Backstayを結成したきっかけは、五ヶ瀬町の厳しい現状にありました。
2008年に、商店街では店が三軒なくなりました。それまで、自分の稼業のことしか考えてこなかったのですが、町の衰退を見るにつけ、このままでいいのだろうかと思うようになりました。
自分の稼業である林業でも、若い子が入るけれども続かない。危険できつい仕事の割には、木材価格が低迷しているので高い給料は得られない。農家の友人に訊いても、みんな苦しいというし、将来、自分の子どもと五ヶ瀬町で暮らしたいけれど、他所で暮らしたほうが幸せなんじゃないかと思ってしまう。結局、夢が描けなかったんだと思います。
インフラが整備されて、暮らしは便利になったかもしれないけれど、豊かにはなっていないんじゃないか、子どもたちのためにも、本気で町のことに取り組まなければいけないんじゃないかと思うようになりました。
薪ストーブの発想は当初からありました。薪ストーブの暖かさは知っていたし、みんな大なり小なり山を持っているわけです。せっかく田舎に暮らしているのだから、その資源を生かした暮らしをしたいと思っていました。都会の人は、そういうライフスタイルに憧れているわけだし、五ヶ瀬町は農家民泊もしています。椎茸、釜炒り茶、ワインなどの優れた特産品もあるのだから、一緒にPRすることで、相乗効果が生まれてくると思いました。
現在、祭りや色んなイベントで歌わせてもらって、薪ストーブのことを伝えさせてもらっています。歌を歌っていて良かったと思います。歌った後だと、不思議と僕たちの話をちゃんと聴いてくれるし、応援してくれます。
活動はまだ始まったばかりで、薪ストーブに対する理解を広めることや、実際に薪ストーブを購入してもらうのは大変だけれど、活動の火種はついたと思います。諦めずに、燃やし続けることで、色んなところに飛び火していくと思います。
西臼杵森林組合五ヶ瀬支所の倉庫にストックされた薪。薪は乾燥させた後、販売する。
薪割り機。仕組みは原始的。前にある羽に対して丸太を後ろから押し、その圧で割る。
薪は、スギ、ヒノキ、雑木(クヌギ、カシ等)。薪割無し、薪割済み、背板で価格が分けられています。軽トラ一台=約1㎥で、薪割無しの場合、六千円~一万円。薪割済みの場合、一万円~一万八千円です。五ヶ瀬町内は、配達もします。
全国的にみても、薪ストーブと薪を同時に組織的に広めている市民活動は少なく、もちろん宮崎県では初の取り組みです。さすが、日本最南端のスキー場がある、五ヶ瀬町ならではです。
木が燃料となるのですから、そういう意味で五ヶ瀬町をみると、まさに宝の山です。また、それを使いながら、育てることができる再生産可能なエネルギーです。那須さんのように、意欲に燃える若い林業家もいます。エネルギーの地域内循環を確立することで、二酸化炭素の削減にも寄与しますし、内需の拡大にも繋がります。エネルギーと、経済の循環は、持続可能な社会をもたらします。
それに、薪ストーブでエコビレッジ。この響きだけで十分、魅力的ではないでしょうか。実際に、年間暖房費8万円削減したおうちもあるそうで、エコノミーでもあります。
薪ストーブは、五ヶ瀬町で暮らす人たちばかりではなく、その活動を知った人たちがもう一度、山や木との関係、地域の宝をみつめなおすよいきっかけになるのではないでしょうか。
薪ストーブの天板の上で、野菜を煮込む。お手伝いをする子どもたち。
最近の薪ストーブは、煙まで燃やしてしまう。ある一定の温度まで達すれば、煙もほとんどでない。
【薪ストーブでエコビレッジ】事業
お問い合わせ
Backstay 事務局 吉村優
E-mail bureau@backstay.net
(レポート 藤木哲朗)
薪ストーブは暖かい。ゆらゆらと揺れる炎を眺めるのも楽しい。
今回、ご紹介するのは、薪ストーブによる五ヶ瀬町エコビレッジ構想を掲げる、五ヶ瀬町の市民グループの取り組みです。
この市民グループは、『Backstay』(五ヶ瀬町を中心に活躍するボーカルグループ。リーダー・那須政彦)、『NPO法人 五ヶ瀬自然学校』(五ヶ瀬町の自然を活かした学びの自然塾。代表・杉田英治)、『五ヶ瀬町林業研究グループ連絡協議会』(五ヶ瀬町の林業家で組織された林業研究グループ。代表・篠村真二)で結成されています。
昨年四月に、桜花亭(宮野原地区)で、薪ストーブ体験会を開催したのを皮切りに、五ヶ瀬町内での薪ストーブの普及、啓発運動に取り組み、今年の一月からは、本格的に薪の生産と販売に着手しています。
『薪ストーブでエコビレッジ』事業 吉村優さん(26歳)
五ヶ瀬町内に薪ストーブを普及させ、山地残材(伐採作業中に出る端材、用途のない間伐材)を薪として活用することにより、山の環境美化、家庭にも環境にもやさしい町づくりを目的としています。また、薪ストーブ利用者の光熱費の削減、林業家による薪づくりという新しい労働の場や、二酸化炭素削減に関する様々な事業の可能性を模索しています。
現在、山の持ち主の高齢化、林業労働者の不足、コストを理由に、手入れの行き届かない山が増えています。山が荒れれば、災害も増えます。逆に、山に人が入れば、鹿や猪の獣害が減ります。
昨年は、農林水産省や環境省の事業や補助金を活用して、五ヶ瀬町の個人宅やNPO団体に六台の薪ストーブが入りました。薪は、薪ストーブの他に、風呂の焚物としても利用されています。高齢化が進み、体力的に薪割ができなくなった年配の方に、大変喜ばれています。薪作りは、西臼杵森林組合五ヶ瀬支所で、雨の日に林業者がします。活動を知った林業者の参加希望者が増え始めています。
薪を売って利益を上げるのが目的ではなく、事業を通して、次世代の子どもたちによりよい環境を残していこうというのが僕たちの活動の根幹にあります。
Backstay メンバーの落合さん宅での練習風景。週に一度は必ず集まる。本番が近づくと連日練習となる。左から 松本陽介さん(32歳) 落合竜麻さん(28歳) 那須政彦さん(34歳) 長田慎司さん(28歳) 他に、岩本撤也さん(28歳) マネージャー・後藤恵さん(28歳) 事務局・吉村優さん(26歳)
『Backstay』リーダー・那須政彦さん(34歳)
Backstayを結成したきっかけは、五ヶ瀬町の厳しい現状にありました。
2008年に、商店街では店が三軒なくなりました。それまで、自分の稼業のことしか考えてこなかったのですが、町の衰退を見るにつけ、このままでいいのだろうかと思うようになりました。
自分の稼業である林業でも、若い子が入るけれども続かない。危険できつい仕事の割には、木材価格が低迷しているので高い給料は得られない。農家の友人に訊いても、みんな苦しいというし、将来、自分の子どもと五ヶ瀬町で暮らしたいけれど、他所で暮らしたほうが幸せなんじゃないかと思ってしまう。結局、夢が描けなかったんだと思います。
インフラが整備されて、暮らしは便利になったかもしれないけれど、豊かにはなっていないんじゃないか、子どもたちのためにも、本気で町のことに取り組まなければいけないんじゃないかと思うようになりました。
薪ストーブの発想は当初からありました。薪ストーブの暖かさは知っていたし、みんな大なり小なり山を持っているわけです。せっかく田舎に暮らしているのだから、その資源を生かした暮らしをしたいと思っていました。都会の人は、そういうライフスタイルに憧れているわけだし、五ヶ瀬町は農家民泊もしています。椎茸、釜炒り茶、ワインなどの優れた特産品もあるのだから、一緒にPRすることで、相乗効果が生まれてくると思いました。
現在、祭りや色んなイベントで歌わせてもらって、薪ストーブのことを伝えさせてもらっています。歌を歌っていて良かったと思います。歌った後だと、不思議と僕たちの話をちゃんと聴いてくれるし、応援してくれます。
活動はまだ始まったばかりで、薪ストーブに対する理解を広めることや、実際に薪ストーブを購入してもらうのは大変だけれど、活動の火種はついたと思います。諦めずに、燃やし続けることで、色んなところに飛び火していくと思います。
西臼杵森林組合五ヶ瀬支所の倉庫にストックされた薪。薪は乾燥させた後、販売する。
薪割り機。仕組みは原始的。前にある羽に対して丸太を後ろから押し、その圧で割る。
薪は、スギ、ヒノキ、雑木(クヌギ、カシ等)。薪割無し、薪割済み、背板で価格が分けられています。軽トラ一台=約1㎥で、薪割無しの場合、六千円~一万円。薪割済みの場合、一万円~一万八千円です。五ヶ瀬町内は、配達もします。
全国的にみても、薪ストーブと薪を同時に組織的に広めている市民活動は少なく、もちろん宮崎県では初の取り組みです。さすが、日本最南端のスキー場がある、五ヶ瀬町ならではです。
木が燃料となるのですから、そういう意味で五ヶ瀬町をみると、まさに宝の山です。また、それを使いながら、育てることができる再生産可能なエネルギーです。那須さんのように、意欲に燃える若い林業家もいます。エネルギーの地域内循環を確立することで、二酸化炭素の削減にも寄与しますし、内需の拡大にも繋がります。エネルギーと、経済の循環は、持続可能な社会をもたらします。
それに、薪ストーブでエコビレッジ。この響きだけで十分、魅力的ではないでしょうか。実際に、年間暖房費8万円削減したおうちもあるそうで、エコノミーでもあります。
薪ストーブは、五ヶ瀬町で暮らす人たちばかりではなく、その活動を知った人たちがもう一度、山や木との関係、地域の宝をみつめなおすよいきっかけになるのではないでしょうか。
薪ストーブの天板の上で、野菜を煮込む。お手伝いをする子どもたち。
最近の薪ストーブは、煙まで燃やしてしまう。ある一定の温度まで達すれば、煙もほとんどでない。
【薪ストーブでエコビレッジ】事業
お問い合わせ
Backstay 事務局 吉村優
E-mail bureau@backstay.net
(レポート 藤木哲朗)
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