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February 2010

山と木の仕事 第1回【木製指輪工房『木刻輪』】

山と木の仕事 第1回【木製指輪工房『木刻輪』】

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 今回、ご紹介するのは、木製指輪工房『木刻輪(もっこくりん)』(高千穂町)です。
木刻輪は、高千穂町下田原地区にあります。山と木に囲まれ、目の前には、扇の形をした田んぼが段々に広がっています。とてものどかで美しいロケーションです。

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 母屋に隣接する三坪ほどの工房で、木製指輪制作に取り組むのが、地元在住の安在隆さん(35歳)です。
 「木の指輪をはめたときの温かみ、木の質感を楽しんで欲しいですね。同じ木目は、一つもないので、『世界で一つだけの指輪』です」。
 さっそく作品を見せてもらうと、確かに木の種類によって、木目や色が違って面白いです。

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 写真 左上のドクロの指輪から時計回りに、椚(くぬぎ)、樫(かし)、栗(くり)、桜(さくら)、槐(えんじゅ)、柿(かき)。

 は万能選手。耐久性が強く、一番信頼しています。はなんともいえない柔らかな色合いが特徴です。焼いたらパンになりそうでしょ。は木に粘りがあります。ピンクや白など、色合いにバリエーションがあります。は、繊維が細かく壊れやすいので耐久面で不安がありますが、光の当たる角度によって、黒に見えたり、茶に見えたりします。とても、その美しさに魅かれます。
 それぞれの木に、それぞれ個性があって、見え方が違うので面白いですね。家の周りや、林道を歩いて、よさそうなのがあったら、持って帰り木の特性を調べます。素材がはっきりしていないと商品としては使えないので、勉強中です。近所に住む親戚のおじいさん(80歳)から教わったり、インターネットや本から知識を得ています。

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 安在さんが、そもそもの指輪をつくろうと思ったきっかけは、ある日、捨ててあった鍬(くわ)の柄を見て、なんか作れんかな~と思ったことからでした。ちょうど指輪ができるほどのサイズなので、試しにナイフでくり貫いてみたところ、なんとなく形になります。やすりをかけた後、テレビを見ながら、毛布で指輪をこすっていると、木目とつやが綺麗にでてきました。驚きました。そして、その美しさに感動して、しばらくその木の指輪に見とれてしまったそうです。それからは木に対する好奇心と探究心が生まれ、指輪制作に没頭していきます。
 「最初は、ナイフや彫刻刀を使って、樫やクヌギで作っていました。形を円にしたり、八角形にしたり、できたものに彫刻をしたりして楽しんでいました。二年前にUターンで高千穂に帰って来て、まもなくのことだったので、実家の農業の手伝いと、バイトの傍ら、毎日のようにやっていましたね。」
 指輪の素材となる木は、家の周りに無数にあり、それに天然石や梵字を組み合わせることによって、独自の作品ができるようになりました。昨年の十一月に熊本県熊本市で開催された『河原町アワード2009』では、審査員特別賞を受賞しています。紹介や口伝いに広まり、今では、インターネット販売や雑貨屋での販売、作品展を開くまでになりました。

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 制作工程は、二つの工程(木材加工、ニス仕上げ)に分けられます。
 木材加工程、①素材を選び、適当な大きさに切断 ②指輪の穴あけ ③荒削り ④サイズ調整 ⑤デザイン彫刻 ⑥天然石はめ込み加工 ⑦やすり磨き上げ ⑧バフ磨き上げ 
これにニス仕上げ工程を加え、一つの指輪を三日から四日の時間をかけて、完成させます。

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この一本の枝から、指輪が生まれます。枝の、芯の周辺部分を使います。

 木材加工工程の中なら、③荒削りと、⑧バフ磨き上げを見学させていただきました。

③荒削り ドリルとよぶ機械で、素材の外殻を削って、指輪の形にしていきます。素材によって、香りも違うそうです。マスクをしていても、ケヤキなどは、本当に良い香りがするそうです。十分程で、だいたいの指輪の形になりました。

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⑧バフ磨き上げ 歯科で、歯を磨くときに使うような機械を使います。先端に「綿」の塊があり、それで指輪を磨いていきます。木目が浮きたち、完成に近づいていきます。

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 天然石に興味があり、パワーストーンを調べているうちに、十二支の梵字と出会い、守護的な意味合いからも、指輪のデザインに取り入れるようになりました。

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樫に梵字

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栗にジルコン

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桜にブルームーンストーン

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樫にトパーズ

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 生まれも育ちも高千穂町。目の前に広がるのは、安在家の田畑と、高千穂の山々です。トム・クルーズ(Tom Cruise)主演のハリウッド映画『トップガン(Top Gun)』に憧れ、航空自衛隊に入隊し、退官後は、隣町の五ヶ瀬町や、長野県でスノーボードのインストラクターをしましたが、望郷の念が募り、二年前に帰郷しました。

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工房入り口の欅(ケヤキ)の木

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工房周辺の木々

 安在さんは木の指輪を制作し始めてから、日常の中でも木に感心がいくようになりました。歩いていても、車に乗っていても、いつもそこにある木に目を奪われてしまいます。 改めて、自分は木という「宝」に囲まれて暮らしているのだと感じています。
 そのまま放置すれば土に帰り「無」になるものを、指輪という「有」に変えていく。木を素材に、自己表現する喜びを知り、木の魅力をもっと広めていきたいという欲求が湧いてきます。
 木の指輪をはめたときの温かみ、質感、木目の美しさ。お客さんとその良さを共有し、喜んでもらった時、安在さんも、この上ない喜びを感じるそうです。
 これからは、もっと腕を磨いて、もっと高千穂の自然とリンクできるような、木製指輪を制作していきたいと、意欲にあふれています。

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 現在、インターネット販売や提携しているショップを通じて販売しています。詳しくは、木刻輪ホームページをご覧下さい。木刻輪の『世界に一つだけの木製指輪』。皆さんも、大自然のアクセサリーを身につけて、大自然とリンクしてみてはいかがでしょうか?


木刻輪(もっこくりん)
制作者 安在隆
住所 882-1413 宮崎県西臼杵郡高千穂町田原1846
電話 0982-75-1504
携帯 090-2274-2670
HP http://moccok.blog.shinobi.jp/

(レポート 藤木哲朗)
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